人ごみの中を歩いた。
大抵は考えごとをしているのでいいのだけど、
妙に意識がクリアだったせいか、すれ違う人と視線があい、切れなくなった。
こうなると大変。
すれ違い完了でその人との「ガンの付け合い」は終わるんだけど、
今度は別の人と目があっちゃう。
「やめろ」とか思うと、余計ダメ。
こうなるともう、どこ見て歩いていいかわからない。
みなきゃいーじゃん、とか思うと余計気になる。
横目でちらちらになるから、相手も変な顔する。
そのうち、目の端のほうの筋肉が引きつりそうになる。痛い。
ぎゃー、歩くだけでくたくた、助けて…!
こういうことはたまにある。
んで、そんなとき私が「救世主」と呼ぶ存在がある。
それは。
犬。
ただし、外人犬ではダメ。
日本古来の雑種、おじさんが自転車乗りながら引いているような奴。
下ごしらえが中途半端でくるんと巻いたエビフライのような尻尾の犬が、
前を歩いていることが条件になる。
目線が定まらないとき、私は犬の後ろ姿を見る。
もっというなら犬の一部分。
犬の、お尻の穴。
犬のお尻の穴を見つめていると、視線は定まるし、
他の人とは目が合わない。
きゅっと締まった、あのピンクとも茶色ともいえない微妙な色。
もっさりもっさり動くお尻の間で、不動の位置を保っている。
その安定感。
見てると、いつのまにか緊張もほぐれる。
癒し系。
今日もありがとう、犬(のお尻の穴)。
いつも遠くから拝んでいるよ。
ずっと見てると口が「*」の形になるのだけが、ちょっと問題。