馬と人の、馬術と演劇の一体化。スペクタクル。
騎馬オペラ「ジンガロ」の「ルンタ」をがんばって初演日に見た。
髪を切っているときに偶然見た、ジンガロの特集。
人が馬を制すのではなく、馬に人が従うのではなく、ただ、ひとつになる。
今回のスペクタクル(ジンガロでは演目をこう呼ぶ)。
ルンタとは、チベット語で「風の馬」。
とたんに、いつか尖塔で聞いたあの音が蘇った。
一目で恋に落ちた。
数日前、その初演が今日だと知って、チケットを取った。
もうネットでは取れないので、電話で直接予約して。
場所は木場公園。東京都現代美術館の隣に、ジンガロ特設シアターがある。
詳しいことは省く。
これからいく人がいるかも知れないから。
だけど。
一歩入った途端、全身が総毛立った。
始まって、最初の10分で泣いた。
(え、なんで?っていう人いるだろうな…でも、出るもんはしょうがない)
香の匂い、地から響く音は人の声。
チベット僧の声明。
開演を待つ間も、もう世界は始まっている。
ジンガロを主宰するバルタバスは今回の公演のために、チベットに行き、
ダライラマに許可を得て、チベット僧を連れてきた。
バルタバスのスペクタクルはまず「音」から始まるという。
音に惹かれ、それに触れ、そこから作品を考え、馬とともに作り上げる。
その間、最低3年。
シアターはそのまま馬場に直結している。そこで人と馬と僧侶は、
文字通り24時間寝食をともにし、ひとつの「何か」を作り上げていく。
どうして日本で、チベット僧の本物の声明を聞くことができる?
それも、ほんの少しも、その意味も価値も損なうことなく?
震えた。
そしてそれがフランス人の愛す、馬と人との間に混じって溶けていく。
チベットと、仏教。馬と人、そしてフランス。
特別協賛しているエルメスの馬具にも興味があった。
シアター併設の小さな展示室には、エルメスの鞍があった。
チベット僧の声明を聞きながらこれを打ってる。
チベットの人が売ってたCDを2枚、買ったから。
そして、馬。
最初の涙は、馬たちを見た瞬間だった。
馬がどんな生き物か。臆病で、群れ成すことが当然で。
そんな彼らが、普通では信じられない動きを見せる。
簡単なように見えて、考えられない動き。
それをさせるための、特別な訓練はしていないという。
奇跡の、一歩手前。
何から書いていいのか分からない。
だから、具体的なことを。
席はプレミア(2万4000円)、SS(1万8000円)、
S(1万4000円)、A(8000円)の4種。箱は中央に円形30メートルの舞台。
近く、どの席でも見れないということはない。豆粒ということもなく、
A席でも十分楽しめる。1列目は触れられそうな感じ。
馬がいなないたとき、鼻水?が飛んでくるくらいに近い。
舞台の2方向(対面)にはチベット僧の舞台がある。
そこで彼らは楽器を鳴らし、声明を、マントラを奏でる。
その隣の席(おそらくSとA)も面白いかもしれない。
私はIゾーンのS席(10列目…S席は9列目から)だったけど、満足した。
トイレは開演前に済ませる。途中退場は基本的にできない。
(できるけど、座席に戻れない可能性あり)
トイレは混むけど数はあるし、箱が小さいので、10分も並ぶことはない。
併設の建物では、軽食、グッズなどが買える。軽食はまさにヨーロピアンスタイル。
ヒースローなどであるオイスターバーのノリ。軽くシャンパンなど。
トイレの恐怖があったので、あいにく私は食さなかかった。
味は不明。しかし相当混む。値段も不明。おそらく安くない。
他、ヒルズに入ってるチョコ専門店がジンガロ特製チョコを。
しかし平均カカオ分65~70%なので、ほんとに苦味を味わえる人で
ないとお勧めしない。ジンガロ特製チョコはジンガロシアターのみの発売。
1000円。ヒルズでも売らない。
オフィシャルグッズは、帽子、ポロシャツ、タオルなど。2000円から。
携帯ストラップは3000円。エルメスなら買ってもいいかな、と思ったが、
違ったのでやめた。
パンフは3000円。途中、日本人俳優のレポートは余計だけど満足のいくもの。
場内は馬と人が激しく運動し、馬場としょっちゅう出入りがあるせいか、
ほとんど暖房が効かない。上着を脱ぐことはない。防寒したほうがいい。
土日は5時開演だからまだいいが、平日は7時だからよけい冷える。
場内は撮影禁止。当然。禁煙。携帯はオフ(1人鳴らした馬鹿がいた)。
あと声明をあげるチベット僧に敬意を表し、スペクタクル中は拍手禁止。
よって集中してみることができる。ただ見て、感じる。
筋はない。ある意味、音楽もない。オペラとなっているが、実際には
オペラではない。人と馬、チベット。それを見に行く。
できればチベットのこと、仏教のこと、馬のこと。
そしてジンガロのこと。少し勉強してから行ったほうがいい。
難しいことはいらなくて、たぶんどっかの女性誌が特集してるのを
よめば十分だと思う(婦人画報?)。
何かに傷ついていたり、ちょっとした分岐に立っていたり、
少し疲れていたり、
そしてなによりも「どこか遠くへ行ってみたい」と思っているのだけど、
その「どこか」がどこだかわからない。
それは心の中にしかない場所なのかもしれない、と思っている人なら。
ジンガロ「ルンタ」は観る価値があると思う。
逆に「ちょっとよさげだから」「流行だから」「珍しいから」と
いう感じで見に行く人、やめたほうがいい。こないほうがいい。
いや別に「わかんねえやつ来るな」とかかっこつけていってるんじゃなくて。
誰よりも観た本人がきっとそう思うから。なんだこりゃ、って。
パンフの中にあるチベットの写真。
それこそが心の中にある国。